ヘックラ火山について


 ショゥルスアゥルダールル渓谷の居住地やもっと内陸よりの地域を含む広範囲を壊滅させた1104年の有史(記録に残っている)最初の大噴火以来、ヘックラは少なくとも20回も噴火し、加えて、ヘックラの山附近でもおよそ25回の小さな噴火を繰り返し、近郊の村落に計り知れないほど多大なる損害を与え続けてきた。ヘックラ火山と黄金の滝グトルフォスの間にはこの大噴火で廃墟と化した中世の農場の遺跡が発掘されており、火山と考古学に関心のある人にとっては興味深い所だ。


14世紀(1300年)の噴火は山をふたつに割るほど大きなもので、噴火の轟き音はアイスランドの北部地帯でも聞こえ、柱状噴出や火山灰で辺りは真っ暗になったと記録にはある。多くのファームは崩壊し、凶作で多くの人々を死に至らしめた飢饉がその後続くことになる。この噴火は丸1年続いた。
1510年の噴火では、とんでもなく遠方まで噴出物を飛び放ち、45kmも離れたところまで重い岩石が飛び散り、周辺に致命的な災害をもたらしている。
1693年の大噴火の際には一気に14のクレーターが同時に噴火し、50のファームを壊滅状態にした。
1766年には更に大きな噴火が発生し、何度かの小休止があったものの2年間も噴火し続け、このときは18ものクレーターが同時に噴火している。
1845年の噴火は7ヶ月続いている。
1947年3月の噴火では、その始まりごろには噴火煙が上空30,000mまで達したほどで、溶岩流は40㎢を覆い尽くした。この時の噴火は13か月も続くものだった。この噴火では柱状噴流が30kmの高さまで達し、40平方kmの広さの土地を被い尽くすほど大量のおよそ1立方kmのテフラ(火砕物)を産出している。
1970年の噴火は小規模なものだったが、中央高原地帯の牧草地に甚大なる被害を与え、フッ化物中毒ももたらしている。
1991年5月には、ヘックラの無数の小クレーターが噴火し、2ヶ月もの間溶岩を流出し続けた。ヘックラ火山のその後の噴火は,1980年、1981年、1991年、2000年と続く。

最近では2001年2月26日18時頃に始まった噴火。同日の夜半には、山頂に沿って6-7キロの亀裂が走リ、円柱状になった水蒸気(柱状噴流)が高度15キロの高さまで立ち込め、火山灰はアイスランドで最も北に位置するグリームスエイにまで達していることが確認された。活動のピークは1時間ほどであったが、噴火はその後も継続し、溶岩はクレーターから流出し、一本の荘厳な真っ赤な川となって東側の斜面を流れ落ち、噴火後1時間を経たころには溶岩流は周辺の低地帯に達し、かなり大量の溶岩が産出された。
この噴火はその当初は1991年の噴火に極めて似た活動状況を示しているかに見えたが、噴火が始まった翌日にも割れ目の南東寄りの部分は活発に噴火し、溶岩を流出し続け、その支流のひとつは南西にまで流れ出た。溶岩は幅の広い川状になって1970年の噴火で創出された溶岩原スキョルクヴィアルSkjölkviarの方向にある北西の段部に向かって流れ出た。噴火開始日、柱状噴流は北に向かっていたが、翌日にはミールダルスヨークトル氷河を越えて南南東に向かって海にまで運ばれた。噴火3日目になっても、噴火のエネルギーは最高時の95%のパワーを維持していた。その後、噴火による柱状噴流は南東寄りに延び、細かな粉塵状の火山灰は北西部のヴァトンスネス半島のスヴァルヴァルズSvalbarðでも認められている。この噴火は公式には同年の3月8日に終焉した。
噴火の翌日2月27日に上空を飛行した沿岸警備隊員により、新たに生まれた熔岩は最長で3-4キロの長さで周辺を覆ったことが確認された。ヘックラ山は申すべくもなくアイスランドで最も知られている火山だ。火山学者は活動が開始する前に-しかも30分以上もの充分な余裕をもって-噴火の警告をした初めてのケースとなった。過去十数回の噴火を繰り返し、近年においても1970年以降にほぼ10年おきに3回(1970、1980,1991)も噴火した。しかし、これらの3回の噴火かなり規模も小さいもの。ほぼ周期通りに9年ぶりのものとなる今回の噴火も活動は継続するものの規模的には小さいと観測されている。
昔からヨーロッパの世界では、地球には地獄への入り口がふたつあり、ヘックラはそのひとつだと信じられてきた。火山にまつわっては多くの突飛で恐ろしく、怖い言い伝えが残っており、この所為でこのヘックラには誰も登ろうとはしなかった。この山への登頂が2人の植物学者によってはじめて試みられたのは1750年のこと。彼らは伝説にあるような地獄への入り口などもちろん発見できず、その後は多くの人々が登頂するようになった。ヘックラへ登頂する一番楽なルートは山の北側からのもので、晴れた日、頂上付近からの眺望は唯々信じがたいほどの素晴らしさだ。

 
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