アイスランドの地勢の特徴

■ アイスランドの地勢
 ヨーロッパで2番目に大きい島アイスランドは、北緯 63°24′〜66°33′, 西経13°30′〜24°32′、北極圏のすぐ近くに位置している。直線距離にすると、ニューヨークとモスクワのちょうど中間にある。グリーンランドへは290Km,スコットランドへは803Km,そしてノルウエーへは 976Km。
 アイスランドの全国土面積は103,000平方キロメートルで、南北の最長距離は約306q,東西のそれは約483qである。フィヨルドと入江部分を含む沿岸線(コーストライン)はおよそ4,970qの長さに及ぶ。沿岸には無数の島々が点在し、幾つかの島々には人々が居住しており、その代表的な島が火山で有名な人口5千人のウエストマン諸島のヘイマエイ。人が住む最北の島は北極圏真下に位置する人口約100人のグリムスエイ。
 地質的にはアイスランドはヨーロッパで最も若い国で、実際に現在でも成長を続けている。アイスランドの大部分は火山活動や地質構造の変容によって形成された台地である。内陸部は完全に人の居住を許さない山岳地帯と高原台地で、 その平均の高さは海抜500mで、最も高いのは南東アイスランドのエーライヴァヨークトル氷河(ヴァトナヨークトルの南部)にあるクヴァンナダルスフニュークルで標高2,119m(アイスランドの最高峰)。又、最大の低地地帯は南アイスランドの沿岸の平地帯。南部海岸地帯を除けば、島は大小様々の湾やフィヨルドが入江を作っており、その多くは内陸ハイランドに繋がる渓谷にまで延びている。

地質構造学上の特徴
中央大西洋海嶺が大西洋の中央部を南北に貫いている(右下図参照)。

アイスランドは中央大西洋海嶺の地溝帯(ギャゥ)の両側 のプレート(北アメリカ・プレートとユーラシア・プレート)に跨るように横たわる島である。アイスランドでは、島の中央を北大西洋中央海嶺が貫いているが、このような島は世界でもアイスランドしかない。中央海洋地溝帯でその海嶺が地表に乗り上げている部分が最大規模である故に、地球上の中央海洋地溝帯の最も肝要な部分をなしていると云える。この様にアイスランドの地形における顕著な特徴は、北部においては北から南の方向に、南部においては北東から南西の方向に走る割れ目(ギャゥ)である。
1950年代に入って、海底測量によって大洋の海底には巨大な海嶺があることが分かった。今や常識的にもなったプレート造溝理論=プレート・テクトニック(地球の表層部を構成している幾つかの大きな岩板=プレートが水平方向に移動することによって種々の地殻変動が起きるという学説)によれば、地震や火山活動は海嶺の軸の上に発生している。そこでのプレートは幾つかに分岐をし、新たな海洋の流れを創り出している。

大西洋中央海嶺の軸がアイスランドのほぼ中央部を南西から北西にかけてを貫いており、 海嶺のてっぺんには地溝帯と呼ばれる割れ目の谷(ギャゥ)がある。アイスランドの南西部に向かって走るレイキャネース地溝帯(アゥルファギャゥ)と北に向かってグリーンランドとノルウエーの間にある火山島ヤン・マイエンの方向まで続くコルベインスエイ地溝帯がそれである。大陸移動説は地球の磁場の極性が周期的に逆転し、磁気計の調査により判明したのだが、大洋流の岩石が液状の玄武岩が変じて溶岩石になる際に、その磁化を失わずにそのまま保有していることが分かっている。また、地溝帯の岩石の磁化の方向を図表化することによって、大洋流の岩石が最も近い大洋の地溝帯に平行して細いヒモ状の縞模様のパターンを示すことが瞭かになっている。

アイスランドは 中央大西洋海嶺の軸の上に、ふたつのプレート間の地表(陸地)部分として活発な火山活動と広く符合しながら過去20〜25百万年に亘って成長し続けてきた島だ。地球の深部で発生するマントル上昇流の上にある熱い表面であるアイスランドは、世界の他の如何なるところより速いスピードで大量の火山物質を溶岩となって蓄積している。ギャゥ(割れ目)を広げることで大きくなり、更に軸上になったギャゥ・ゾーンに沿って発生する火山活動によって付着成長を続けている。中央地溝帯の中心へ絶え間無く新しい溶岩が蓄積されて前の溶岩が水平に押しやられ、中央地溝帯を境目にアイスランドは東と西に向けて成長を遂げているのだ。その成長のスピードは1年に東西夫々に1〜1.5cm、合計2〜3cm。ギャゥを境に、アイスランドの西の部分は北米大陸プレートに属し、東の部分はユーラシア大陸のプレートに属している。
こうしたギャゥはアイスランドの何ヶ所かで見ることができるがその最大規模はシンクヴェトリルにあるアルマンナギャゥ。シングヴェトリルの西端に位置し、長い溶岩割れ目断層で西の一帯は高い絶壁になっており、最高地点からシングヴェトリルの全景とギャゥの壮絶な眺望を観察することができる。

ギャゥはミールダルスヨークトル氷河の麓にあるエルドギャゥ、ミーヴァトン湖近くのミーヴァトン湖近くのグリョゥタギャゥ、レイキャネ−ス半島の突端部附近でも観察できる。レイキャネース半島のギャゥは「大陸の割れ目」を意味するルファギャゥ Álfagjá だ。ハプ二―ルの南、レイキャネ−ス半島の西の入江サンドヴィークル小湾の沿岸部ストゥラ・サンドヴィーク附近にある。アメリカ大陸とユーラシア大陸を分断するギャゥには橋が架けられており、徒歩にて二つの大陸を渡ることができる。

 


Revised:12/05/24