アイスランドの地熱地帯と温泉

 

アイスランドは地熱活動が活発でこうした地帯を訪れると蒸気煙が何本も立ち昇っている光景に出会う。アイスランドでは地熱をエネルギー源として世界で最も活用している天然エネルギー源利用の最先端国である。電力エネルギーに限れば15%前後が地熱発電によるもので、アイスランドにはスヴァルセンギ(Svartsengi)ネーシャヴェトリル(Nesjavellir)クラプラ(Krafla)そして2009年5月に運転を開始したヘトリスヘイジ(Hellisheiðiði)を加えて4つの地熱発電所があり、特にクラプラのものは世界最新の地熱エネルギー・パワーステーションである。こうしたパワーステーションは電気を産出するだけではなく、一方ではホット・ウオーターを産み出し極北の生活には欠かせない暖房システムを賄っている。

地熱発電以外にも温泉はいろいろな利用のされ方をしている。温室裁判用のグリーンハウス、ミーヴァトン湖のシリカ(珪藻土の乾燥施設(現在工場は閉鎖されている)、そして昆布を飼料や肥料にするための乾燥(西部フィヨルドのレイクホゥラル)、更には塩田の乾燥(レイキャネース半島)などと広い分野で利用されている。二酸化炭素を含む温泉がスナイフェルスネス半島の何箇所かで湧き出ているが現在ではほとんど利用されていない。活火山ヘックラの直近の噴火をきっかけに溶岩のしたから湧き出た温泉からも二酸化炭素が新たに見つかっている。

アイスランドはそのほぼ中央を走る地溝帯(ギャゥ・ゾーン)を中心に毎年東西に2〜3cm広がり続けていること地 アいすランド地質構造上の特徴」 で触れた。地熱地帯はこうした中央地帯に多く存在する。 一方、西部フィヨルド地帯、東アイスランドはほぼ300万年前の第三紀系の玄武岩質の古い地質であるために一部(スナイフェルスヨークトルやロイガルホゥラルなど)を除きほとんど地熱地帯はない。

 

地熱地帯には大きく区分して高温度地帯と低温度地帯がある。

マップ等を見るとreykur(smoke)laug(warm)、hver(hot spring)という言葉がついている地名が各地にあるがほとんどが温泉が出る地帯である。大雑把な判断となるが、クヴェーラゲルジHveragerðiのようにhverが付いている温泉地帯は高温度地帯、ロイガルヴァトンLaugarvatnのようにLaugが付いている地帯は低温度おの温泉地帯となる。

 高温度地帯
 アイスランドは温泉が豊富で、世界のどの国よりも高温度の温泉が湧出している。高温度温泉は14の硫気孔原がある新しい火山の中央地帯に限られ、激しい蒸気穴、ぼこぼこ沸き出る泥だまり、硫黄沈殿等の現象が特徴。高温地帯とは断層と火山の活動が活発な一帯で表層での温度がほぼ1kmの深部で200℃以上の地帯を云う。

主要な高温度の温泉地域は、以下の通り。

*ブレンニステインスフィヨットル(Brennisteinsfjöll):レイキャネース山脈の尾根のひとつ。別名硫黄の山。

*クリスヴィーク(Krísuvík)最も有名な地熱地帯の一つ。

*トルヴァーヨークトル氷河(Torfajökull):ヘクラ火山の東にある小氷河。

*グリームスヴォトン(Grímsvötn):ヴァトナヨークトルの氷河底は現在でも活発な火山地帯。グリームスヴォトン火山 はその代表格で1986年と1988年に大噴火し、世界的に有名になった。ヴァトナヨークトル氷河下には七つの火山中心帯があり、アイスランドでも近年最も活発な活動を展開している。

*へインギットル(Hengill):シンクヴァトラヴァトン湖の南、ネーシャヴェトリル地熱発電所があり、首都圏へ室内暖房用熱水を供給している。

*ヘトリスへイジ(Hellisheiði): へインギットルの南に広がる溶岩台地にある地熱ゾーン。2009年5月に第4番目の最新のパワー・ステーションが運転を開始している。

*クヴェーラゲルジ(Hveragerði)地熱を利用したグリーンハウスがずらりと建ち並ぶ地熱地帯にある町。

*ケルリンガルフィヨットル(Kerlingarfjöll):ラングヨークトルとホフスヨークトル両氷河の間にある部分的に氷河に覆われた連峰。山間の谷間が高地熱地帯  。

*クヴェーラヴェトリル(Hveravellir)ラングヨークトルとホフスヨークトル両氷河の間を縦断して走るキョルール内陸路にある高温地熱地帯。

*ナゥマフィヤットル(Námafjall)ミーヴァトンの近く。温泉活動と月面のような荒涼とした景観で知られる。

*クラプラ(Krafla) アイスランドで2番目に若い活火山活動地帯。最新の地熱発電所がある。

*クヴェルクフィヨットル(Kverkfjöll)北ヴァトナヨークトルにある標高1920mの雄大な山岳  

■低温度地帯:
  平均温度が75℃以下の地熱地帯は低温度の温泉地帯と呼ばれる。アイスランドではこうした低温度の地熱地帯は全国いたるところに存在しており、その数は約250、温泉の数は800を超える。以下はその本の数例に過ぎない;

*デイルダルトゥングクヴェール(Deildartunguhver):アイスランド最大の湧出量を誇る温泉(ヨーロッパ最大でもある)で、毎秒150リットルの熱湯を湧出している。1981年以来、ボルガルネスやアークラネスの地域暖房用の熱湯として利用されている。

*ゲイシール(Geysir):世界的に有名な間欠泉で南アイスランドのホイカダールルにある。かっては60〜70mの高さまで噴きあげていたが、現在では活動休止中。替わってすぐ傍にあるストロックルが活発に噴きあげている

*ミーヴァトン(Mývatn)ユーラシア大陸とアメリカ大陸のプレートが邂逅する割れ目(ギャゥ)の下に地下温泉が湧き出している。 数年前からミーヴァトン湖版のブルーラグーン、ミーヴァトン天然露天風呂が通年で営業している。

*ロイガルヴァトン(Laugarvatn):温泉の湖を意味する村で、その名の通り温泉が豊富な一帯ビスックプストゥングルの中心。温泉と地熱を農作業用の動力に利用している。

*レイクホルト(Reykholt)古典サガの作家と同時に学者であるスノーリ・ストゥルトソンが地熱を利用して作った温泉プールが今も残っている。

*ブルーラグーン(Blue Lagoon, Bláa Lónið)自然が創造した温泉ではなく、地熱エネルギーを利用して人工的に造られたもの。スヴァルトセンギ地熱発電所のポンプが地表下2kmから汲み出す鉱物(ミネラル)を豊富に含んだ熱水(240℃) が広大な人工温泉源となっている。

*ランドマンナロイガル(Landmannalaugar)陸部に入ったフィヤットラバク自然保護区にある地熱地帯。温泉が川に流れ込んでいて、露天風呂も楽しめる。



Revised:12/04/09